英雄とは何か?
英雄とは、自ら周りに対して誇示すべきものではない。
英雄とは、他者から与えられる称号である。
彼の者は、永き眠りの中にいた。
目覚めを待っていた。
再び戦場へと導かれる、その日を。
――――話をしよう。
上の詩は、ある聖書に記された序章の一部である。
さて、勘の良い読者諸君ならばすでにお分かり頂けて当然のこととは思うが、念のため説明しておこうか。
これらの詩は、全てある「英雄」に関して綴られたものである。
英雄の名は【メムナイト】。
起源にして終焉、誕生にして崩壊、そして無限の可能性を示す構築物……いや、騎士である。
この0マナ1/1のクリーチャーを、君達はどれほど評価しているのか。
そんなことは実に些細な問題だ。
重要なのは、本日行われたファイナルス予選において、私がこの【メムナイト】の力によって10回以上の【復讐蔦】を墓地から場に戻し、総計で50点以上の戦闘ダメージを対戦相手に(復讐蔦が)叩き付けたという、その事実だけだ。
場には【極楽鳥】とアンタップの土地が3つ。
ここで私は4マナ全てをひねり出して【復讐蔦】を唱える。
しかし、突き刺さる【マナ漏出】。
残されたマナはない。
「もう終わりか?」
刺客は薄く笑う。
だが私は構わない。
なぜなら、私の手札にはすでに【メムナイト】が握られていたのだから。
「悪いな。コイツはこのターン、2回目に唱えられたクリーチャー呪文なんだ」
「な……バカな、ソイツは……っ!」
「さっきまでの威勢の良さはどうした? 笑えよ【前兆の壁】」
地を蹴り、復讐の蔦が疾走る。
たかが4点、されど4点。
致死には遠いが、それは確かな傷跡だ。
しかも、次のターンにはダメージのクロックが1点増えている。
もしも相手が【復讐蔦】を壁で受ければ、攻撃力を持たない城塞は容易く崩れ去るだろう。
そして【メムナイト】は確実に相手の命を削り取る。
その逆もまた然りだ。
安全に【メムナイト】を受け止めるばかりでは、【復讐蔦】の攻撃は食い止めることができない。
「前門の虎、後門の狼」状態であることは確定的に明らかである。
「クソが……いい気になりやがって……!」
「お前、何か勘違いしているようだな」
「何?」
「どうやらお前は、私のデッキに入っている【メムナイト】の枚数を把握しきれていないようだ」
「ハッ。なんだ、私の【メムナイト】は108式まであるとでも言いたそうな口ぶりだな」
「逆だよ」
「……何、だと……?」
「真逆だよ。私のデッキに、【メムナイト】は1枚しか入っていない」
「バ、バカな!なら、ならば貴様は……貴様はっ!」
「……ああ、初手にあったんだよ。自分でも恐ろしいくらいだ。マリガンする気すら、失せてしまったよ……」
雷鳴が響いた。
嵐の前の静けさは、とうの昔に過ぎ去っていた。
私はすでに嵐の中にいた。
嵐の中心にいた。
そしてそこには、常に【メムナイト】がいたのだ。
――――決着の行方など、もはや語るまでも無い
仮に、今君が【ウギンの目】の能力を起動できるだけのマナを確保していたとしようか。
デッキの中には【引き裂かれし永劫、エムラクール】、【真実の解体者、コジレック】、【無限に廻る者、ウラモグ】がそれぞれ1枚ずつ眠っているとしよう。
今、相手はターンのエンド宣言をした。
さて、君はすぐさま【ウギンの目】の能力を起動し、ライブラリの中を探し始めた。
目に付いたのはやはり【引き裂かれし永劫、エムラクール】、【真実の解体者、コジレック】、【無限に廻る者、ウラモグ】の三神。
いずれであろうとも、1枚で場を制圧することのできる巨大クリーチャーだ。
ゲームに勝利するため、君はそれらのどれかを選択するだろう。
……だが。
少し待ってほしい。
君には今見えたはずだ。
ライブラリの中にある、その1枚のカードが見えたはずなのだ。
そのカードを君が自分のデッキの中に入れた覚えがあるとかないとか、そんな些細なことはこの際どうでもいい。
そのカードが今こうして、デッキの中にある。
答えは、それだけで十分だろう?
――――なぁ、【メムナイト】……
「せっかくだから、俺はこの【メムナイト】を選ぶぜ」
するとどうだろうか。
「……ゑ?」
対戦相手は思わずそう聞き返してしまうはずだ。
それほどまでに、君が今行った行動は対戦相手のはるか斜め上を行く行動だったのだ。
呆気に取られた対戦相手の顔が目に浮かぶだろう。
まるで悪夢を見ているかのような、絶望に打ちひしがれる顔だ。
まぁ、無理もない。
【メムナイト】だ。
まさか【ウギンの目】から【メムナイト】をサーチしてくるプレイヤーがこの世界に存在しようなどと、彼は夢にも思わなかったのだろう。
だが、問題は何もない。
【メムナイト】は正真正銘の無色のクリーチャーだ。
だから君は、何一つ間違ったことなどしていない。
胸を張れ。
そして、叩き付けろ。
目の前の悪夢のような現実から逃げようとしている、哀れな対戦相手を笑い飛ばしてやるかのように、【メムナイト】を。
勇ましく、高らかに、気高く、誇らしげに、勝利を確信して疑わないかすかな微笑と共に。
――――君の思い描いた「理想」を、「現実」に変えてやればいい
「体は構築物で出来ている」
「血潮は油で心は砂鉄」
「幾度の戦場を越えて腐敗」
「ただの一度も送還はなく、ただの一度も破壊されない」
「彼の者は常に独り、蔦の横で勝利に酔う」
「故に、その生涯に意味はなく」
「その体はきっと、構築物で出来ていた」
【メムナイト】に栄光あれ。
英雄とは、自ら周りに対して誇示すべきものではない。
英雄とは、他者から与えられる称号である。
彼の者は、永き眠りの中にいた。
目覚めを待っていた。
再び戦場へと導かれる、その日を。
――――話をしよう。
上の詩は、ある聖書に記された序章の一部である。
さて、勘の良い読者諸君ならばすでにお分かり頂けて当然のこととは思うが、念のため説明しておこうか。
これらの詩は、全てある「英雄」に関して綴られたものである。
英雄の名は【メムナイト】。
起源にして終焉、誕生にして崩壊、そして無限の可能性を示す構築物……いや、騎士である。
この0マナ1/1のクリーチャーを、君達はどれほど評価しているのか。
そんなことは実に些細な問題だ。
重要なのは、本日行われたファイナルス予選において、私がこの【メムナイト】の力によって10回以上の【復讐蔦】を墓地から場に戻し、総計で50点以上の戦闘ダメージを対戦相手に(復讐蔦が)叩き付けたという、その事実だけだ。
場には【極楽鳥】とアンタップの土地が3つ。
ここで私は4マナ全てをひねり出して【復讐蔦】を唱える。
しかし、突き刺さる【マナ漏出】。
残されたマナはない。
「もう終わりか?」
刺客は薄く笑う。
だが私は構わない。
なぜなら、私の手札にはすでに【メムナイト】が握られていたのだから。
「悪いな。コイツはこのターン、2回目に唱えられたクリーチャー呪文なんだ」
「な……バカな、ソイツは……っ!」
「さっきまでの威勢の良さはどうした? 笑えよ【前兆の壁】」
地を蹴り、復讐の蔦が疾走る。
たかが4点、されど4点。
致死には遠いが、それは確かな傷跡だ。
しかも、次のターンにはダメージのクロックが1点増えている。
もしも相手が【復讐蔦】を壁で受ければ、攻撃力を持たない城塞は容易く崩れ去るだろう。
そして【メムナイト】は確実に相手の命を削り取る。
その逆もまた然りだ。
安全に【メムナイト】を受け止めるばかりでは、【復讐蔦】の攻撃は食い止めることができない。
「前門の虎、後門の狼」状態であることは確定的に明らかである。
「クソが……いい気になりやがって……!」
「お前、何か勘違いしているようだな」
「何?」
「どうやらお前は、私のデッキに入っている【メムナイト】の枚数を把握しきれていないようだ」
「ハッ。なんだ、私の【メムナイト】は108式まであるとでも言いたそうな口ぶりだな」
「逆だよ」
「……何、だと……?」
「真逆だよ。私のデッキに、【メムナイト】は1枚しか入っていない」
「バ、バカな!なら、ならば貴様は……貴様はっ!」
「……ああ、初手にあったんだよ。自分でも恐ろしいくらいだ。マリガンする気すら、失せてしまったよ……」
雷鳴が響いた。
嵐の前の静けさは、とうの昔に過ぎ去っていた。
私はすでに嵐の中にいた。
嵐の中心にいた。
そしてそこには、常に【メムナイト】がいたのだ。
――――決着の行方など、もはや語るまでも無い
仮に、今君が【ウギンの目】の能力を起動できるだけのマナを確保していたとしようか。
デッキの中には【引き裂かれし永劫、エムラクール】、【真実の解体者、コジレック】、【無限に廻る者、ウラモグ】がそれぞれ1枚ずつ眠っているとしよう。
今、相手はターンのエンド宣言をした。
さて、君はすぐさま【ウギンの目】の能力を起動し、ライブラリの中を探し始めた。
目に付いたのはやはり【引き裂かれし永劫、エムラクール】、【真実の解体者、コジレック】、【無限に廻る者、ウラモグ】の三神。
いずれであろうとも、1枚で場を制圧することのできる巨大クリーチャーだ。
ゲームに勝利するため、君はそれらのどれかを選択するだろう。
……だが。
少し待ってほしい。
君には今見えたはずだ。
ライブラリの中にある、その1枚のカードが見えたはずなのだ。
そのカードを君が自分のデッキの中に入れた覚えがあるとかないとか、そんな些細なことはこの際どうでもいい。
そのカードが今こうして、デッキの中にある。
答えは、それだけで十分だろう?
――――なぁ、【メムナイト】……
「せっかくだから、俺はこの【メムナイト】を選ぶぜ」
するとどうだろうか。
「……ゑ?」
対戦相手は思わずそう聞き返してしまうはずだ。
それほどまでに、君が今行った行動は対戦相手のはるか斜め上を行く行動だったのだ。
呆気に取られた対戦相手の顔が目に浮かぶだろう。
まるで悪夢を見ているかのような、絶望に打ちひしがれる顔だ。
まぁ、無理もない。
【メムナイト】だ。
まさか【ウギンの目】から【メムナイト】をサーチしてくるプレイヤーがこの世界に存在しようなどと、彼は夢にも思わなかったのだろう。
だが、問題は何もない。
【メムナイト】は正真正銘の無色のクリーチャーだ。
だから君は、何一つ間違ったことなどしていない。
胸を張れ。
そして、叩き付けろ。
目の前の悪夢のような現実から逃げようとしている、哀れな対戦相手を笑い飛ばしてやるかのように、【メムナイト】を。
勇ましく、高らかに、気高く、誇らしげに、勝利を確信して疑わないかすかな微笑と共に。
――――君の思い描いた「理想」を、「現実」に変えてやればいい
「体は構築物で出来ている」
「血潮は油で心は砂鉄」
「幾度の戦場を越えて腐敗」
「ただの一度も送還はなく、ただの一度も破壊されない」
「彼の者は常に独り、蔦の横で勝利に酔う」
「故に、その生涯に意味はなく」
「その体はきっと、構築物で出来ていた」
【メムナイト】に栄光あれ。
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